ラッシュライフ|伊坂幸太郎
2006.11.09 Thursday

- ★★★★★
※注:長いです!※
重力ピエロ、オーデュボンの祈りに続いて読んだ作品。重力ピエロでは「何が良いのか分からない」、オーデュボンの祈りでは「軽いノリだけど何かが引っかかる(その後何度も読むうちに大好きになった)」‥だった伊坂幸太郎への印象が、ラッシュライフで「素晴らしい!」へ変わった。伊坂作品へハマるきっかけになった本。
この作品の感想を書く上でとても難しいのが、素晴らしいと思った所を言ってしまうと、ある意味ネタバレになってしまうところ。ぼかしながら頑張ってみますが、今から読む!という人は避けて下さい。もしかしたら分かってしまうかもしれないので‥
構造が素晴らしい。文庫版は中表紙に、初版(?)は表紙に、それぞれエッシャーのだまし絵が使われているが、なるほど。確かに、構造はパズルのよう、構成はエッシャーのだまし絵のような印象の作品だった。
ストーリーの前半では、何人かの登場人物の日常の一コマがオムニバスのように語られる(それも、「ラッシュライフ」という言葉に絡められて)。そして、後半ではそのコマが入れ替わり組み変わり、それぞれの登場人物を含めたひとつの絵が浮かび上がるようになっている。組み変わる瞬間も演出の一つになっている所が素晴らしい。
エッシャーの絵で言うなら(AllPosters.comへリンク)、前半は、絵のとある箇所のクローズアップがいくつか見える、というような状況。階段を上り下りしている人々が見える箇所もあれば、柵にもたれて上を見上げる人が見える箇所もあり、大きな建物の一部分が見える箇所もある。その時点では、城かな?とか、デッサンのように正確だな‥とか、そんな程度しか分からない。
それが、後半に行くに従って、だまし絵全体が見えてくる。クローズアップから、全体像へ。その過程で、もしかしてこれは普通の絵ではない‥?と気付いてゆき・・・普通のデッサンに見えたものが、実は巧妙なだまし絵だった、と分かった瞬間には、痛快な程の爽快感に衝撃を受ける。あ〜やられた!という感じ。エッシャーの絵と同じく、この作品にも無駄な線はほとんど引かれていない。だからこそ、騙される。‥うまいなぁ!
難を言うなら、何度も読み直すと驚きが薄れてしまうこと。慣れるから当たり前なのだが‥。そんな時、または、構成よりも中身だ中身!という方は、作中に出てくる「リレーのバトン」を意識しながら読むのもいいかもしれない。バトンとは、人生から人生へ、親世代から子世代へと渡されるものだけではなく、ふとすれ違った人からも、何らかの形で渡されているものなのかもしれない。もしくは、その人自体が、誰かからのバトンだったりするのかもしれない。そんな風に考えると、また違った視点から楽しめた。
文章自体は、少し硬質な印象。ユーモアは少なめで、言葉数を抑えているような印象があり、誰にでも読みやすい文章。
構成の爽快感の強さが魅力的な作品なので、なるほどそうだったのか!とか、やられた!という本を読みたい人におすすめしたい。面白いですよ〜〜出版社:新潮社
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